温度-粘度-密度の推定シミュレーター
さっそくシミュレーターです。ご利用ください。
各温度は主にSAEJ300とSAEJ306で求められる絶対粘度の値を100℃、40℃の動粘度と、15℃の密度の入力値から求めます。
詳細や意義は以下の記事をご覧ください。
温度-粘度-密度の推定シミュレーターの意味
炭化水素系の液体、つまり潤滑油の温度と動粘度の関係式は次のWalther Equationで記述されます。これは別の記事で紹介しました。潤滑油はアプリケーション毎におさえなければいけない温度が指定されています。
エンジンオイルのSAEJ300、100℃の動粘度に加えて、
150℃におけるHigh Temperature High Shear, HTHS粘度(絶対粘度)、
Cold Cranking Simulator, CCS(絶対粘度)における-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、
Mini-Rotary Viscometer, MRV(絶対粘度)における、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃
が挙がります。
自動車用ギアオイルのSAEJ306なら、
BrookField粘度(絶対粘度)における、-55℃、-40℃、-26℃、-12℃でしょう。
ではWaltherの式でこれらすべてを推定できるでしょうか。注意点が二つあります。
1.単位の問題
動粘度と絶対粘度が混在する点です。動粘度は単位に密度を含まないのに対し、絶対粘度は動粘度と密度の積です。したがって、Waltherの動粘度と温度の関係だけを推定しても、他の重要な粘度パラメーターとの比較がしずらいわけです。密度の温度依存性も推定しないといけないわけです。
2.レオロジー
粘度とひとくくりにしても、実際には測定条件が異なるため粘度の予測が難しい点です。具体的には、動粘度以外の粘度測定方法は、測定条件に潤滑油に「せん断速度」という一種の流れをあたえるため、粘度がずれます。この効果により潤滑油の粘度推定は完全にただしくなりません。
動粘度と絶対粘度を温度ごとに推定する意味
「せん断」がない場合の粘度を推定することによって、潤滑油にどのような問題が起きているのか分かるという点で、計算による推定には意味があります。
試作したエンジンオイルやギアオイルの低温粘度(CCS,MRV,BF)などがフェイルしてSAEJ300やSAEJ306から外れてしまったとしましょう。原因をどう考察すればいいでしょうか?
粘度指数が小さいので、処方の低温での粘度上昇が大きく、狙いの範囲に入らないのでしょうか?それであればベースオイルや粘度指数向上剤の選定により適切な粘度範囲にコントロールする必要があるでしょう。
それともワックスの発生で異常な粘度上昇が起きているのでしょうか?それであればベースオイルの抜本的見直しや、流動点降下剤の最適化を検討するべきかもしれません。
得られている粘度から、他の温度における絶対粘度や動粘度を推定しておく威力は、この考察の解像度に寄与することにあると思います。
密度の推定;温度と密度の関係式
密度は単位体積あたりの質量で、JISでは温度を指定したうえで、単位としてg/cm3が使用されます。
潤滑油では15℃の密度を測定し、報告されることが多いとお考え下さい。さて、密度は温度によって変わります。炭化水素からなる潤滑油においては、密度は温度が上昇するほど減少しますが、一定の法則があるため、計算により推定することができます。もちろん、厳密に議論すれば潤滑油の化学的組成や分子構造により密度が変化しますが、本記事ではそこまで立ち入りません。
JIS K 2249-4では温度と密度の関係式が示されているので、本ブログでもこれを採用します。くわしくはJISを参照ください。
式としては次のとおりです。
dt = d15 – 0.0005793×(T – 15)
dt : 対象温度での密度
d15: 15℃での密度
T: 対象温度
特定の温度の動粘度推定の方法
Waltherの式を用いた、対象の温度における動粘度の推定方法は下記リンクを参照ください。
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